建築から学ぶこと

2011/03/16

No. 270

そこでの、適切なメッセージ

金曜日の午後、地震の揺れを感じたのは大阪市内のビルの19階だった。そこでの会議を終えて落ち着いて速報を収集してみるうちに、被災地から離れている立場でできる務めを果たさねばならない、と思った。連絡が繋がりにくい東京は発信する機能が下がっている、と感じたのである。冷静に事態を把握すること。明らかになっていない情報に基づいた判断をしないこと。1995年の阪神・淡路大震災の渦中にいたときは、そこにある事実を的確に伝えなければならないという使命感が生まれたが、今度は客観的に事態を見通し、見守る立場に変わった。現代は手元にメールとフェイスブックという手段を持ちあわせており、これを活用した。今秋のUIA2011東京大会の準備に携わる立場としては、ここで国際的に正しい情報を発信しなければならない。そして、海外からの問い合わせや励ましのメッセージには必ずポジティブな反応で返すこととした。日本と世界との関係はずっと続くものだから、それは長い目で見て大切である。

この第270回を書き上げたのは3月15日の夜であり、まだ事態は動き続けている。被災地の立ち入りは困難であり、この状況で災害を総括することは難しい。そうなると誰の発言を信じることができるか、真贋をどのように見分けるかという判断が重要になる。土曜日に官房長官の会見をTVで聞いてみて、少なくともこの人の発言にはついてゆくこととした。結果として前言を否定することもあっても、大災害時の判断は、国の公式見解に基づくことにしなければ、国内向けにも、海外向けにも見解が不統一になるからである。

ところで、内田樹さんはブログのなかで、被災の現場から離れている者は「寛容(否定的な言葉を自制する。)」・「臨機応変(非常時のルールは弾力的に。)」・「専門家への委託(災害への対応については。)」を心がけるべきと書いている(「未曾有の災害の時に」3月13日)。不安な状況を乗り越えるために基本的にどうふるまうかについて、彼はそうまとめた。至極同感である。

佐野吉彦

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