建築から学ぶこと

2024/11/13

No. 942

その人たちとかかわった私の50代

思いがけなく、今年は縁のある3人の建築家が世を去った。まず、岩村和夫さんからは環境建築のあるべき姿も教わったが、岩村さんは、ル・コルビジェからジョルジュ・キャンディリスへと受け継がれた、建築家としての社会改革への使命感を備えていた(第669回参照)。私は2005年あたりからUIA2011東京大会(世界建築会議)の準備を共にし、当時UIA(国際建築家連合)の運営の中枢を担っていた岩村さんを通して、世界が連帯する意味と意義を学ぶことができた。東京での大会運営がグローバルな形と質で進められたのは間違いなく岩村さんの功績である(2022年に亡くなった長島孝一さんも重要な存在だった)。
槇文彦さんはこの大会の名誉理事会の理事長で、槇さんはUIA大会の精神的支柱であった。もちろんそれだけでなく、槇さんの建築家としての価値は世界に知られているし、大事な局面で驚くべき直言をされる。そうした活動を支えるのが高潔な人格であったからこそ、人は槇さんに敬意を払っていたと思う。AIA(米国建築家協会)からゴールドメダルを受賞された2011年のニューオーリンズで、私は槇さんのエスコート役を務めたので、現地で多くの人からの祝辞・賛辞を取り次ぐかたちになった。
ところで、建築界はいろいろな場面で無用な対立が生まれることもある。UIA大会準備の過程でも、日本の建築界がひとつになるには手間を要したものである(リーダーの小倉善明さんが尽力された)。一般的に、ロジカルでない対立は厄介だが、うまく収拾できれば実りも生まれる。出江寛さんとは、2002年にJIA近畿支部長になった出江さんをサポートした関係があった。その後のお互いの立場での違いからお付き合いが途絶えた時期があったが、すでに数年前にとても穏やかな関係に戻っている。個と個とはさしたる問題はなかったのである。3人とのご縁はそれぞれ忘れ難く、そして心からの感謝を捧げる。

佐野吉彦

岩村さんの訳によるキャンディスの本を再び手に取る。

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