2008/07/09
No. 139
3年に一度のUIA(国際建築家連合)の大会、UIA 2008がトリノ(イタリア)で開催された。3年間会長を務めてきたガエタン・シュー(モーリシャス)は、UIAは「多様さのプラットフォーム」であるべきことを開会式で述べている。世界の建築家8,500人が集まったこの大会は、まさに多様な顔ぶれ。大会後の総会で選ばれた新会長ルイーズ・コックス(オーストラリア)はバイタリティある人だから、その多様さをさらに強力な力にまとめてゆくだろう。UIAのミッションには都市問題や大規模災害への対応、次世代の育成といったテーマの推進、そして建築家という職能を支える基盤づくりなどがある。建築というかたちは社会の動向の鍵を握るであろうから、UIAは一層存在感を高めてゆくことが期待される。
開催地、冬季オリンピックでも知られるトリノは、ホスト役としてはコントロールが甘いところがあったが、至るところにこだわりが透けて見えた。会期中毎朝発行される「新聞」に前日の講演や会議のサマリーが掲載され、手際よく言語化が行われているのはおおいに感心する。それは、ばらばらになりがちな大会の動きを整理することに役立っていた。トリノの人々もここから建築家のメッセージを読み取るわけだが、市民へのUIAブランドの浸透・定着に有効、というところまでは行っていないだろう。さて、3年後の開催地は東京。ここでUIA、日本の建築界の存在感を示せるであろうか。
大会4日目、7月2日の夜は各賞の授賞セレモニーである。そのあと同じ会場でクセナキス(1922-2001)とヴァレーズ(1883-1965)のオーケストラ曲が2曲ずつ演奏された。クセナキスはコルビジェのもとで設計担当者として働き、担当したブリュッセル万博1958のフィリップス館で自曲を演奏していたのがヴァレーズだったという仕掛けのプログラミングだった(ついでながら、私がクセナキスを初めて聞いたのは大阪万博1970の鉄鋼館だ)。演奏はとても充実したものだったが、この日の建築家たちにはさほど受けていない。こだわりたいのはわかるのだけれど。