建築から学ぶこと

2012/10/31

No. 348

公園を育てるための組織体

先日、ある経済団体から、セントラルパークの維持管理について講演してほしいというテーマを与えられた。最終的には「公園と公共空間を育む組織」と名付けて、アメリカの公共空間の維持管理やイヴェント運営などにかかわるNPOについて話すこととした。メインにはニューヨークの大公園をケアしているThe Central Park ConservancyCity Parks Foundationの概説を据えながら、サンアントニオのRiver walkでの事例、シカゴのChicago Architecture Foundationの取り組みを比較して語った。私はNPOの研究者ではないけれど、一応は実践者であるとは言えるので、日本でも公共空間を民間がケアすることは可能だと感じてはいる。

この日に強調したのは、1つ目には、いずれも自発的に組成された組織から始まり、結果として資金調達能力と組織力を獲得するに至ったこと。2つ目には、ひとつの公園を単一組織が独占しているわけではなく、複数がうまく住み分けをしながら活力維持に関わってきたこと、である。さらに3つ目に指摘したのは、それぞれの組織は自治体から管理業務などを引き受けていることの責任感を有しており、後継する世代を育てる意識が備わっていることである。どの団体も活動の柱としているエデュケーションプログラムは、市民や青少年に専門分野の基礎知識を伝えるものだが、それを通じて組織のリーダーを鍛えたり発掘したりすることができる。

眼前には大公園をつくるプランがあり、今回の私の役割はそのための基礎情報共有として用いられる。もっとも、魅力的な大公園と有効な大組織とをつくるタイミングは必ずしも同じではないだろう。むしろ自発的に少しずつ活動を積み重ね、充実させてゆくのが望ましいことを言い添えた。今日のセントラルパーク(1859年完成)の魅力は、ランドスケープアーキテクトであるフレデリック・ロー・オルムステッドの構想力に基づいているが、荒廃していた期間も長かった(特に1970年代)。山積していた課題を時間をかけて解決することで公園も組織も枝葉を広げたのである。

佐野吉彦

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