建築から学ぶこと

2019/01/16

No. 655

新しい潮流を、受身でなく

昨年の日本は、働き方改革推進や入管法改正といったテーマで重要な節目を通過した。働きやすい環境づくり、多様な文化の共生は望むところだが、それを社会がどのように前に進めてゆくかはまだまだ練り込みが足りていないところがある。もちろん時期尚早であったわけではない。どうも、政治レベルの決定があってからあわてて事を動かしていることが多いような気がする、これからの日本がどうあるべきかについて、社会全体がもっと腹を据えて取り組むべきだろう。
もうひとつ、昨年からの新たな潮流が先端技術の展開である。この状況下にあってまだAIに対していぶかしい眼差しを向けている向きもあるが、それでは正しい社会適用はできないだろう。すでに、時計の針は進んでいる。急ぐべきは、新技術導入を試行する一方で、法制度の検討・倫理面の検証などを並行して進めておくことである。たとえば、先端技術のなかのホットな話題である自動運転については、すでに米中が実用化前夜というところまで来ているようだ。一方の日本はスタートがやや遅れているのだが、車両の開発研究以上に、交通法規や道路設置基準の見直し、事故の場合の責任など、かなり緻密に詰めておかないと狭隘な国土での適用は難しい。その点では新幹線は1964年の開業時点で、在来線とは違うシステムをしっかり作りあげていたと思う。自動運転に対する社会の本気度は足りないのではないか。
ところで1月17日は阪神淡路大震災から24年を迎える。当時と比べて災害へのボランティアの寄与も厚みを増し、探索技術も通信手段も格段に進化している。では今後、同規模の災害に対してどれほどの人命を救えるかと考えると、まだ十分ではないと思う。新たな制度や技術を受け身でなく取り入れる姿勢が、本当に安心して暮らせる社会をつくりだすだろう。

佐野吉彦

交通技術は都市の風景を変えるか?(写真はシンガポール)

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