2011/05/25
No. 279
過日、大阪でシンポジウム「震災から再生へ—阪神・淡路大震災の経験から—」を企画しコーディネートした。目的は16年前の震災を知る関西から具体的に提言することであったが、震災の可能性は今後この地にもある。広汎な議論のなかには、再生やまちづくりのプロセスに、すぐに結論を出そうとする傾向があることを戒める意見があった。そこに専門家が入ることで計画は適切な手順やスピードで進み、結果として適切な選択につながるという趣旨である。そのために、平時から専門家と社会がきちんとネットワークをつくっておくことは重要なポイントとなるであろう。もちろんそれは災害発生直後の行動連携にも効力を発揮するものである(5月19日、建設交流館。出演: 河田惠昭、小島孜、辰野勇、仲隆介、鳴海邦碩、本多友常、吉村英祐の各氏)。
前回紹介したカトリーナ災害の地・ニューオリンズでのAIA(アメリカ建築協会)大会のなかでは、全米の中で最も自然災害に向きあってカリフォルニア州が先行するかたちで始まっている最新のAIA Disaster Assistance Program が紹介されていた。竜巻・洪水・ハリケーンに見舞われがちな南部諸州では、これまで建築の専門家が緊急行動において能動的だったわけではなく、カトリーナ災害が自然災害対応への契機となった。それでのあまたの災いに向きあうアメリカ、そして日本の災害。社会とともにあるリスクをどうマネージするかは、ぜひ国際的にクロスさせながら共有してゆきたいものだ。
ところで、大会での私は、初期の昂奮の段階が終わりつつあるBIM(Building Information Modeling)の活用方策について報告する機会を得た。まちづくり・災害からの再生計画づくりのデータベースに使えるのではないかという提案である。このばあい、BIMは官が活用しても、民のビジネスチャンスとして使ってもいいだろう。異なる視点を交わらせるところにこの技術の有効性があるのだとしたら、災害からの再生はそれにふさわしい機会になるのではないか。