建築から学ぶこと

2013/03/13

No. 366

バンコックにある「兆し」

タイで大規模な洪水があったのは、東日本大震災と同じ2011年。夏から年末まで続いた困難は、多くの日系企業の生産への影響とともに記憶されている。東北の災害が全国に影響したと同じく、タイの災害も日本国内に及んだ。厳しさが取り上げられがちなグローバル化も、すでにいろいろな業種による展開が進んでいる現状が明らかになったのである。そこには人の移動が結ぶ情報の複合があり、国境を越えての消費動向のダイナミズムがあり、災害がもたらす困難への認識共有化があり、課題解決に向けての国境を越える連携が生まれる。2011年に直面した現実は、背後に重要な意味を含むものとなった。

いま、バンコク都市圏には水害の痕跡も実際に残る一方で、それを越える成長のエネルギーに満ちている。至るところで渋滞する幹線道路に連なる車を見ても、交通システムの改善や整備、自動車にかかわる新たなビジネスの発生を誘い出す「予兆の混沌」のように感じられる。郊外にあるSSIC(積水化学とSCGの合弁会社)は、この地の住宅生産プロセスに新たな効率性と質を加えそうだが、ここでは新規マーケットを開拓する視点が鍵となって活動が充実するであろう。

ところで、この国にある建築家団体の正式名は、タイ王立建築家協会 The Association of Siamese Architects under Royal Patronage(ASA)と呼ばれる。専門家は、統べる元首の志を受けて社会的責務を果たす存在という前提がある。本部は中心部からやや離れた静かな住宅地にあるが、2年ほど前に大型商業ビルの中にASAセンターというイベントスペース+ライブラリーを設けた。私は訪ねたランチタイムは外部貸出のセミナーが開催されて賑わっていた。ここはつまり、建築家が運営に携わる広場。市内鉄道駅に直結したビルだから、渋滞を気にせずにアクセスできるのはいい。

佐野吉彦

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