建築から学ぶこと

2016/01/20

No. 507

福岡の情熱、それを伝える器

福岡市美術館で開催中の「九州派展」を観た。キャッチコピーには<戦後の福岡に産声をあげた、奇跡の前衛集団、その歴史を再訪する>とあり、1950年代中盤から60年代初頭まで、戦後復興のエネルギーと矛盾のなかを駆け抜けたムーブメントが紹介されている。同様な動きとしては、ほぼ同時期に阪神間や大阪で大きな存在感を示した「具体芸術」がよく知られているが、福岡にあったこの高まりのことを私はあまり知らなかった。「具体」の変遷が吉原治良を中心としたキャラクターができあがっていたのに比べると、「九州」にはいろいろな作風が同居していたことがわかる。個々の作品が発するメッセージは過剰だが、豊かでない時代にあっても完成度は高く、見ごたえあるものだ。この美術館は昨年戦後70年を記念して展覧会シリーズを開催し、「九州派展」もそのひとつだったが、すでに今回の展示の多くはコレクションのなかに含まれていた。ここまでの学芸員の粘り強い意思が見事な結実を呼び寄せたと言える。

ところで、福岡の戦後は大陸や朝鮮半島からの帰還に始まり、その後県内に重工業の発展と炭鉱の衰退があるなかで、商業・業務拠点として成熟を続け、とりわけ1990年代からはアジア諸国とのネットワークが密になり重みを増した。1999年に市が開設した福岡アジア美術館はその象徴でもあり、積極的な人と人との交流を維持しながら、アジアの視点を加えた意欲的な切り口から美術の現在を支える役割を果たしている。

建築がたどった戦後も実に興味深い。この地では、度量ある建築主が黒川紀章や磯崎新らに代表作を生むきっかけを与え、多くの海外建築家にも充実した仕事をする機会を与えた。建築もアートと同様、地域のエネルギーとパーソナリティが成果を導いたのだ。こうした建築におけるそうした土壌と伝統を明らかにし、次代へ引き継ぐ役割はNPO法人福岡建築ファウンデーションが担っている。福岡はいろいろな分野において、人と人をうまく出会わせてきたが、そのワクワク感を伝える語り手にも恵まれた場所だ。

佐野吉彦

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