建築から学ぶこと

2010/04/28

No. 227

インターンシップ生はかく語りき

低温続きからようやく脱した4月の午後、東京理科大学(大学院工学研究科建築学専攻)の「インターンシップ研修報告会および特別講演会」に出かける。私は後半で、「建築界を変えるインターンシップ制度」を語る役目があった。継続的な「学び」が要請される時代にあって、教育機関と社会をまたぐしくみのもとで運営されるインターンシップでは、ひとりの人材を建築界がいかに適切に育成するかが試みられる。参加する側も、覚悟を決め手この制度を能動的に活用してほしい、そんなことを話した。

制度の滑り出しの昨年度、東京理科大学は真摯に緻密に制度対応を進めてきた。だからこそこのような企画が催されているとも言える。私が語ったのは、建築界の動きとこの制度の関係だったが、この日の前半、学生が順次登壇した昨年のインターンシップ報告が大変興味深いものだった。あきらかに彼/彼女らは法律法文で記された以上の成果を得ていることを感じた。主として夏のあいだ、設計事務所や施工会社に出向いて実務に携わるなかで、ある学生は、実務におけるタイムマネジメントの重要さを体得し、ある学生は意匠とエンジニアリングのせめぎあいのなかで機能する3Dの効果を認識した。タイプの異なる2つの職場、異なるマネジメント形態の下で働いた学生は、設計プロセスの多様さと、そこでメンバーがどう機能するのか、機能することを期待されているのかを実感したようである。

学校で身につけた知識と現実に用いられる知識の差を見極めた学生は、本質的な知見を得たのだと思う。そこには相互矛盾はないのだ。知識とは、学問的追究と実務とのあいだでフィードバックすることで鍛えられてゆくものだから。日本らしいインターンシップ制度とは、成長プロセスの通過ポイント強化だけではなく、経験を通じて技術者としての認識や倫理を育てる類稀なる機会として充実させたいものだ。それは行く手のテーマを発見する機会でもある。「学の分野」におけるそれぞれの追究を充実させることにも寄与するであろうし、結果として研究機関としての大学はおおいにメリットがあるはずである。

佐野吉彦

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