建築から学ぶこと

2008/11/19

No. 157

開いて、結んで、風が吹く

休みの日の朝、部屋の窓を開けて風を入れるのは気持ちがいい。近代合理主義に染められているオフィスビルだって、ときどき表の通りの風が抜けてきてもいいのではないか。この秋、そんな試みをわれわれの拠点で試してみた。大阪事務所での企画は、ある一日の午後、「夢を奏でる仕事」という名を冠した、ビル1階ロビーでの模型展である。

われわれはオフィスのある北大江地区のまちづくり活動に長年携わっていて、定期的に近隣のみなさんと一緒に公園でまちづくりイヴェントを催したりする。公園の整備を皆で一緒に取り組んだ経緯もあるからだ。実はこの北大江というところ、音大やコンサートホールがあるわけでもないのに、楽器店が多い。それに気づいた今年は、それらのスペースを借り受け、毎夜会場が変わるライブコンサート(「たそがれコンサート Week 2008」)を計画している。われわれのアイディアは、これに呼応したライブ感覚のワンデイミュージアムだった。スタディモデルを棚卸しして公開してみると、面白いとか、おやこれも担当されたのですかとか、さまざまな反応がある。企画した側にとっては新鮮な経験だった。

やはり自社ビルである東京事務所が取り組んだのは、1階にある店舗「ROGOBA」のスペースを、JIA千代田地域会企画の共同展「建築模型を見にいこう!展」(関東甲信越支部の「アーキテクツ・ガーデン2008建築祭」のなかの企画)の会場として使うことだった。同じ千代田区内の芦原太郎さんのオフィスがもうひとつの会場で、両拠点のあいだで日常にはない人の流れも生まれた。ここで思い浮かぶのは、この秋の「横浜トリエンナーレ」や「多摩川アートラインプロジェクト」、「雨引の里と彫刻」が、作品をひとつひとつたどりながら、地域のポートレートを浮かびあがらせるものだったこと。きっと、開くにしても結ぶにしても、誰かの足と脳を刺激しているにちがいない。

同じ時期、埼玉県立近代美術館での「都市を創る建築への挑戦」という共同展に関わった。今度は建築設計という職能が風に乗ってまちに吹き出してゆく番か。ちなみに設計組織同士が切磋琢磨するライブセッションでもある。

佐野吉彦

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