建築から学ぶこと

2007/05/09

No. 81

PASMOが変える感覚

先日、綾瀬市(神奈川県)での仕事のあと、新横浜へ向かった。相模地方の鉄道ネットワークは細かいが、肝心なところが一本で繋がらない。道路も同じだ。結局、相鉄の「さがみ野」から「横浜」で市営地下鉄に乗り換えるのが、その時間帯では速かった。ほかにも、相鉄→小田急→東急→JR横浜線をたどるルートもある。こうした選択可能性が複数あるとき、PASMO(パスモ)という一枚のカードは乗り換えのわずらわしさを取り除いてくれる。切符を買う手間の節約だけでなく、遅延などによる急なルート変更も自在だ。

首都圏をカバーするPASMOはこの3月にスタートした。(1)主要私鉄と地下鉄網、(2)JR線にまたがって利用可能なカードシステムで、PASMOは(1)サイドの、Suica(スイカ)は同じ内容の(2)JR東日本の商品である(付帯サービスは異なる)。関西エリアのPiTaPa(ピタパ)とICOCA(イコカ)も同じことだが、(1)か(2)だけでも目的地に到達できる関西より、首都圏のほうが(1)と(1)を組み合わせるメリットが大きい。首都圏の鉄道の複雑な繋がりかたを認識すればするほど、これまでのありようと比べての快適感が増すと言えよう。

逆に言えば、これから先は、今乗っている線がどこの鉄道会社かを認識していなくても、利用可能だということである。テクノロジーの飛躍は、心理的な面でのユニバーサル化を達成させることになった。さらに、(1)と、元国鉄であった(2)との区別もなくなるかもしれない。公営地下鉄を除く首都圏の鉄道をすべて私鉄とみなす感覚が常識となるだろう、と原武史氏は記している(「鉄道ひとつばなし2」)。ICチップの搭載はかくも画期的なできごとだった。その通りに動けば「膠着した状況を突破するきっかけは、理念ではなくテクノロジーだ」という教訓を学べそうである。

佐野吉彦

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