建築から学ぶこと

2006/11/15

No. 58

まちを歩くテクノロジー

国土交通省が「まちめぐりナビプロジェクト」に取り組んでいる。「観光客への情報提供の高度化による移動支援の先進的な事例をつくる」という趣旨で提案を公募し、25地域とその活動主体を選び出した。今年度内に各地で実証実験を進めてゆく。観光立国という施策に、情報技術の幅広い展開を組み合わせようとするものだが、実施地域リストとその内容を見るとなかなか楽しい。容易に予想されるとおり、データベースと携帯電話の連携が大半を占める。そのなかには自動的に情報が配信されるものもあり、携帯で2次元コードを読み取るものもあり、テクノロジーの応用にはバラエティがみられる。

そのなかで興味深いのが「日本橋観光まちナビ実証実験」。主要な地域は東京都中央区のほぼ北半分で、日本橋界隈や人形町界隈を含む。水天宮のような知名度のあるスポットもあるが、どちらかというと買い歩きを楽しむ場所と言える。この実験の推進役であるNPO法人東京中央ネットはこの地域で活動を続けてきた。昔からの住民、新住民、オフィスワーカーなど、多様な価値観が組み合わさるという、かなりホットなエリアである。

ここで使われる情報端末が、実は携帯ゲーム機なのである。携帯電話のトレンドは若い世代がつくっているが、任天堂DSは高齢の世代から。ヒットしたソフト「脳力トレーニング」にしてもまず中年層に火がついた。これを使ってみよう。画面が大きく操作が簡単となれば、多世代・荷物を抱えた観光客には使いやすいのではないか、という発想である。

当面、大学祭などでのデモ版公開とアンケート調査を経て、年末年始頃から実際に街中で様々な人たちに試してもらう予定で、実証実験を続けることになる。情報端末は果たして人の動きにフィットするのか、人の動きを変えるのか。また、商店にとって新たなビジネスチャンスとなるのか。意外な組み合わせがつくる意外な展開は楽しみである。

佐野吉彦

アーカイブ

2024年

2023年

2022年

2021年

2020年

2019年

2018年

2017年

2016年

2015年

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年

2008年

2007年

2006年

2005年

お問い合わせ

ご相談などにつきましては、以下よりお問い合わせください。