建築から学ぶこと

2023/12/20

No. 898

あるアイデアコンペのこと

今年、ささやかなアイデアコンペの表彰式が開催された。この<新宿みらいアイデアコンペティション> は、「JIA(日本建築家協会)関東甲信越支部新宿地域会」、ならびに東京理科大学の工学部建築学科の同窓会である「築理会」との協働の取り組みであった。前者は、JIAの中で新宿区域を活動の基盤とするグループ。後者は、同じ大学で建築を学んだという共通項を持つグループである。いまは建築学科の本拠は神楽坂エリアにあるキャンパスから葛飾区内に移り、神楽坂には社会人コースだけが残る。だが、何かと新宿区には思いが深い。幸い、両グループは共通したメンバーがいたことから、今回の協働が実現した。そういう重なりあいは運営において相互理解に達するためにも、双方が持つ殻を破るためには大事なポイントである。
あるとき、両グループは同じことを着想した。何か新宿区域のためにいい提案ができないか。そして、若い世代のために、若い世代の活躍の後押しを一緒にできないか。そこで思い至ったのが学生のためのコンペで、運営にはそれぞれの人的資源と経験を出しあった。実施は、立ち上げようとした次の年にコロナの流行が始まったことから、やや遅れての今年、2023年である。
第1回は東京理科大ゆかりの神楽坂の坂下、にぎわいが始まる交差点を敷地に設定し、「粋なお江戸の坂の街をもっと魅力的にしてください」というテーマが添えられ、全国からの応募を得た。なお、審査員には新宿区内にある4大学(工学院・法政・早稲田・東京理科大)のプロフェッサー・アーキテクトが加わり、さらに専門家ではない地域在住者が入っている。これによって客観的な視点を確保することができたのではないか。仕掛けた当事者の私としては、応募側も審査側それぞれの、神楽坂との距離の取り方を目撃できた興味深い機会であった。

佐野吉彦

試みのはじまりをデザインする。

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