建築から学ぶこと

2021/10/06

No. 789

佐賀の地にある可能性

バレーボールVリーグ(女子)に属する久光スプリングスが、新たな練習拠点を神戸から佐賀県鳥栖市に移すことになり、過日、工事が着工した。当地には親企業である久光製薬の本社があるが、鳥栖駅前にある敷地はサッカーJリーグJ1のサガン鳥栖のスタジアムと近接する。鉄道の結節点であり続けたこの街は今後、スポーツタウンとしても名を売ることが期待できる。実は、今回添えた写真にもあるように佐賀県全体ではスポーツのチームが多数あるほか、佐賀インターナショナルバルーンフェスタのような国際競技会もあり、干潟を使う鹿島ガタリンピックのような息の長い企画もある。鳥栖はその文脈にも位置付けてよいだろう。

こう見ると佐賀は問題提起型の取り組みが豊富だ。武雄市の図書館・歴史資料館は、カルチュアコンビニエンスクラブが指定管理者になり、蔦屋書店を併設して大きな注目を集め、地域の取り組みは、図書館を含む全国の公共施設変革の先駆となった。このような、佐賀の面白さは、小さい県域ながら個性あるポイントが、日本海に接する唐津や伊万里を含めて多士済々揃っているところにある。オール佐賀としての共通イメージは弱い印象もあるが、人口減があっても何とか持ちこたえているのはこの多様性に理由があるのではないか。

今後もこうした利点を活かしてゆくなら、長続きする国際イベント、あるいは芸術祭の企画・誘致、イベントを立ち上げるならネットを活用したクラウドファンディングやサポーターシステム活用、スタートアップを支える居住環境整備、ローカル鉄道の有効活用などいろいろ試してみるべきであろう。全国各地にも同様の視点での取り組みはあるが、適度な規模の都市が揃い、しかも温暖で、福岡からの利便性のある佐賀なら、どれも明るい炎がともりそうには思えるのだが。

佐野吉彦

佐賀の精鋭たち。

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