建築から学ぶこと

2025/04/16

No. 963

交流の幕が開く、EXPO2025

大阪・関西万博が4月13日に開幕した(10月13日まで)。私は幾度か会場に足を運んできたものの、開幕日の会場をあらためて見渡すと新鮮である。木造の大屋根リングが会場を威圧的でなく引き締めていて、明瞭な会場構成になっている。今回の各国パビリオンは総じて穏やかな趣向と言えるだろうか。ロシアが出展せず、米国や中国も節度が感じられるからかもしれない。興味深いのは、リングに反応して木材を素材に選んだパビリオンが目に付くところである。
とは言えこの時点では、私は中身を比較して伝えることもできないので、これからおいおい検証してゆきたい。開幕日の私は、仕事で関わっていたフランスパビリオンの開館式典と内覧会に参加したのだが、展示を貫く物語(人や自然とは赤い糸で結ばれている、という話である)がしっかりしていて質が高い仕上がりになっていた。一方で、光や素材の使い方はどんどん進化していても、先端技術自体を誇るスタイルではない。それが国として今回アピールしたいところなのだろう。
今回の万博は、全体の準備がいくぶんもたついたこともあり、開催情報がなかなか出てこないのはもどかしかった。そして、万博開催とは、鑑賞以上に交流が重要である理念も強調してきてほしかったとも思う。たとえばこの万博には「テーマウィーク」と名付けられた、多様な切り口からメインテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」を掘り下げるプログラムが用意されている。これは議論やビジネスの契機になりそうだし、国際交流の原点を見つめる機会になりそうだ。開幕とは、6か月の間に得られるはずの収穫に向けてのスタートラインである。初日には人が押し寄せ、そこに雨が襲い掛かり、様々な試みの運営も虚を突かれた感じだが、その改善もこれからのミッションである。

佐野吉彦

傘の花も、人の枝も。

アーカイブ

2025年

2024年

2023年

2022年

2021年

2020年

2019年

2018年

2017年

2016年

2015年

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年

2008年

2007年

2006年

2005年

お問い合わせ

ご相談などにつきましては、以下よりお問い合わせください。