建築から学ぶこと

2010/06/09

No. 232

共同作業のそのさきへ

日本建設業団体連合会(日建連)日本土木工業協会(土工協)建築業協会(BCS)が統合に向けて合意した。順調にゆけば明年4月に統合した団体がスタートする。技術の守備範囲が異なる団体ではあるが、その専門とするところを尊重すれば、これから先の障壁は低いだろう。いずれも、経営における価値観を同じくする施工会社が構成員であることが、成立への決め手であった。会員の権利は対等だからである。技術的な切磋琢磨を怠らないようにすれば、うまくゆくケースと思われる。好例はさておいて、こうした統合交渉は、トップ合意があっても、95%意見が合致しても、基本的価値観が異なる場合にはなかなか難しいところがある。これまで幾度もあった政権与党の連立でも、国家観や意思決定プロセスが異なると行き詰まる。確かに妥協を厭わないかどうかはポイントであるが、経済合理性だけでは、統合は結果的に成功しないものだ。

その観点から、定常的に建築設計にかかわる意見交換をする五会、日本建築家協会(JIA)日本建築士会連合会日本建築士事務所協会連合会・建築業協会(BCS)設計部会、日本建築学会の現在を眺めてみれば、統合へ向かうのはそう簡単ではない。だからこそ、共通する重要な課題にともに取り組むことを通じて、お互いの価値観を少しずつチューンアップしてゆくのは賛成だ。現状の日本の建築界をただしく示すには、今はどの団体も滑り落ちないことが重要である。

たとえば、第225回で触れたように、プロフェッショナルの継続的能力開発(CPD)を社会制度(法制度、というのではなく)として安定化させるために協力しあうことは可能である。各団体にしかできない視点と経験に即して定常的に連携する教育基盤は、建築と建築界のクオリティと潜在能力を立体的に保証する。それは単独の取り組み以上に魅力的だ。それぞれの出発点が異なるからこそ、共同作業はさらに時代にふさわしい社会資本の可能性を開く。2000年を越える歴史を持つ建築設計は、まだまだ進化する余地がある。

佐野吉彦

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