2018/09/12
No. 638
何と、前々回の災害の話には続きがあったとは。大阪の台風被害と北海道の地震が同じ週に発生したのである。それぞれに起こったのは予期しない角度からだった。台風は雨より風が強烈で、関空は、施設と滑走路が冠水したこと以上に、連絡橋に衝突した船舶による障害が大きかった。地震のあった北海道の方は、限られたエリアの地盤への影響の甚大さに留まらず、停電が全道に及んだことで生活インフラが膠着する事態に陥り、産業基盤を揺さぶった。
考えてみると、この両地域には共通点があった。観光である。インバウンドが活発化する中、大阪府はデータの上で今や観光県になった。外国人観光客の都道府県訪問率は全国1位であり(2018年第1四半期、観光庁)、大阪市は住みやすい都市ランキングで3位(2018、英国エコノミスト誌。ウィーンが1位、東京は7位)である。外国旅行滞在先ランキングでは、大阪市の伸び率(2009-16)が1位というのだから、印象以上に、このところ大きな変化が起こったと言えるだろう。もちろん、自然に恵まれた北海道は潜在的にまだまだ多くの観光客を呼び込める可能性がある。宿泊施設の整備が進めばさらに増えるに違いない。
そこへ襲いかかった災害である。もはやインバウンドの動きを止めては、地域経済は回らなくなっている。これからは身近なインフラとともに、空港の安全確保や復旧は優先的に動くべきことが明らかになった。両地域は、新しい「ポートフォリオ」に合わせて、いろいろなリスクを乗り越える態勢を整える必要がある。リスクマネジメントへの投資は地域経済を支える。今回は第636回で述べた国際協調の課題とは色あいが違うのだが、災害はじつにいろいろなことを考えさせる。