建築から学ぶこと

2022/12/07

No. 847

静かに、熱く伝わる建築家の魂

11月に二人の建築家の展覧会があった。ひとつは川崎清(1932-2018)の足跡を追い、もうひとつは石井修(1922-2007)を回顧するものである。どちらも関西を中心に印象深い仕事をした。
川崎清展は<「見えざる建築」の輪郭>というタイトルで、様々なスケールの建築を手がけ、社会システムを描いた巨人の姿を見せる。大規模建築でもあたたかな手ざわりを感じさせる作品を残しているように、幅の広さを感じさせる人であった。また、川崎さんは阪大と京大での教授職にあり、学内外で多くの人材を鍛えた。これぞと見こんだ相手が、期待を凌駕する成果を示した時には大いに喜んでおられたという。
主催はNPO法人建築文化継承機構で、会場には金沢工業大学に寄託されているドローイングと模型などが展示された。川崎清設計による「京都勧業館みやこめっせ」のエントランスエリアを会場に使ったことでで、何気なく立ち寄った家族連れが興味深く覗き込んでいたのが面白い。亡くなっても社会と次世代に影響力を与えていたのである。
石井修さんは今年が生誕100年となる。多くの模型とドローイングを集めて開催された兵庫県立美術館の会場では、時間をかけてていねいに生み出された西宮市の目神山エリアの住宅群の味わいを堪能できた。石井さんは「建築に外観はいらない」と語るように、自然と溶けあう趣は見事なものである。一方で、「人間生活のための器であるべき住宅が商品としてのみつくられてゆくとすれば、不幸なことと思えてならない」と述べ、誠実に社会資産を世に送り出した。石井さんは決して孤立した作家ではないのである。
こちらの展覧会の実行委員長は弟子にあたる建築家・竹原義二さんで、石井さんの熱い志と丁寧な仕事を受け継いできた人だ。会場には建築を学ぶ若者がたくさんいたが、亡くなったのちにも、好ましい影響を及ぼすところは川崎さんと共通している。

佐野吉彦

川崎清展会場に、光降り注ぐ

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