2022/12/28
No. 850
12月にあった能声楽家の青木涼子さんのコンサート(紀尾井町ホール)は、彼女自身が演じながら、現代ヨーロッパの作曲家の様々な作品作風を紹介する企画だった。今回は、日本と西洋音楽を結ぶテーマを長年追究してきた作曲家・細川俊夫さんがミュージックアドヴァイザーを務めている。細川さんはこの日ステージに上がって、自ら関心の深い、能舞台の橋掛かりを例に引き、青木さんこそ異なる世界を橋渡す人である、と述べていた。そもそも異なる文化を橋渡すというテーマは、近代が芸術においても政治においても追いかけてきたものだが、その重要さは、様々な場面でほつれが生じた2022年の世界の中ではひときわ身に染みる。
私にとっての2022年は、BIMの普及定着に向けて、いろいろな立場で仕事をした年だった。データをつなぎ活かす点はBIMが長じている点であり、BIMは効率性だけでなく、都市の課題解決や地域の前向きな変化において、平和に使える武器になるのではないか、と問いかけ続けた。BIMを活かした建設プロセスの変革が、新たな人材を生み、地域の将来の鍵を握るのなら楽しいことだ。2023年は、それが一層軽やかに展開してゆくことを期待したい。
そう、軽やかさはどのテーマにおいても重要なのである。国内外での懸案の具体的解決に向けては、政治の果敢なリーダーシップもさることながら、民間主導でこそいろいろなチャレンジが広がる。距離が離れていて、背景が違う同士なら、結びつけることで新たな流れを作りにゆくことができる。最終的な達成に時間がかかるほど面白いのではないか。12月には、学生ベンチャーが取り組む社会事業「規格外野菜の画材への活用」の話に希望を感じ、各企業がリアルな関心を持ち始めた「宇宙ビジネス」のうねりに、国家競争ではない未来の可能性を感じた。希望はあちこちに転がっている。