建築から学ぶこと

2005/10/19

No. 5

アートと都市は反応しあい、そして・・・

第2回横浜トリエンナーレ2005が現在、開催中である(12月18日まで)。山下公園に程近い山下埠頭倉庫がメイン会場であり、刺激的な現代アートが至便な場所で気軽に楽しめるという趣向である。30か国・地域出身の86作家の一般的な知名度は平均すると高くないが、トリエンナーレは彼らにとってのきっかけになってゆくだろう。印象的なのは、アジア系作家が競いあうゾーンの混沌としたエネルギー。人気を呼ぶに違いない。

この会場が持つ、既存の美術館と違った面白さは、それぞれのアーティストが空間に向きあって格闘を繰り広げるところにある。荒削りな場に反応し、また隣りあって創作するアーティストに刺激を受けながら、自らの表現の強度を高めている。アトリエ制作でなく、具体的な場にかかわりあいながら表現することを、サイトスペシフィック (site specific) な表現という。場にポテンシャルがあれば、表現は鋭さを増すということである(考えてみれば建築設計こそサイトスペシフィックな作業と言える)。会期中訪れる観客との相互反応によっても作品のかたちが進化する可能性もある。

類似の取り組みは国内にもいろいろあるが、大規模なものとして、来年は新潟県南部で第3回越後妻有(つまり)アートトリエンナーレが開催予定。こちらは広いエリアに会場が分散する。いずれにせよ、そうしたサイトスペシフィックな試みが生み出す成果を何に活かしてゆくのか、そこは肝心なところである。開催される都市のアクティビティは果たしてアーティストを触発できるか、逆にアーティストは都市に新たな視点を提供できるかどうか。異質なものと日常が出会うことで、新しい価値が必ず生まれるはずだが、ねらうところをフォーカスすることが重要である。動員数や収益が目標にあっても差し支えないが、単発的なイベントに留めては勿体ないことなのだ。

佐野吉彦

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