建築から学ぶこと

2015/12/23

No. 504

サステナブルシティの戦略:高雄市

高雄市は台湾南部の要衝。この国2番目の人口(約277万)を擁する大都市の発展は重工業が支えてきた。そして、港の規模もアジアのなかで香港・シンガポール・上海に次ぐランクに成長している。さらに、台北との間を新幹線が1時間30分でつないだことは、経済に好影響をもたらした。街区や緑地にも清潔感が感じられる一方で、印象深い観光ポイントに欠けることもあって、高雄の国際的な印象度はそう鮮やかではない。そうしたこともあって、高雄市は<サステナブルシティ>を政策ターゲットに位置づけた結果、5年ほど前から国際的に高い評価を得るようになった。

ソーラーパネルの普及へのインセンティブは、伊東豊雄の設計による「国家体育場」にも適用されているし、意欲的な活用促進は広汎に見られる。整備が進むウォーターフロントの集客の中心である「市立図書館総館」や「高雄展覧館(展示場)」などにも、デザインの個性やアクセスのフレンドリーさを含む、サステナブルな視点が統合されて盛り込まれている。もうひとつの看板プロジェクトが台湾初のLRT・高雄環状軽軌道である。現在3駅間で試験運転が行われているが、まもなく順次開業し、ウォーターフロントを経由する環状線となる。旧貨物線軌道敷の活用、軌道面の緑化、停車時間20秒で充電する方式(架線がない)など、なかなか<スマートなシステム>である。

また、このエリアに多い湿原生態系の維持保全への取り組みも好感が持てる。こうした政策は、定住人口増加と国内外からの一時的滞在者増加の両面に向けられている。サステナブルシティを明瞭に謳って取り組む姿は双方にアピールするだろう。それなら日本のどこの都市もできそうなものだが、目標達成のために公共建築や土木インフラを効果的に組み合わせたところは参考にすべきであろう。

佐野吉彦

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