建築から学ぶこと

2012/06/13

No. 329

面白くて、ためになる場面

いつもながら中高の同窓会にゆくと楽しいのは、年齢を重ねてきたせいか。多様な分野の色に染まった同輩の近況話は興味深いが、何かと苦労が絶えないようすはどこも一緒。苦心を共有できることはとても有意義だ。この日は予め各自3枚程度のパワポを用意してくるルールだったので、関西人のわれわれは単なる苦労話ではなく笑いも仕込んで臨むことになる。それは共通の文化基盤の上で育ったからこそである。

別の回でも書いたことだが、中学3年であった1969年は社会が沸騰しており、そのなかで考えていたことはいまも身体に染みている。さて先日、「キャリア学習」の外部講師としてある中学校に出向いた。異なる職業の人たちが7-8人ずつを受け持って、生徒の質問に答えながら対話する学習で、iPadで写真や資料を見せながらの楽しい時間だった。ここでは、仕事は誰かのために、あるいは誰かと一緒にまとめる共同作業だということを語り、できあがった建築を楽しく使っているようすを見るのが嬉しいこと、とりわけ学校など設計した建築で人が育つのは特に楽しいことなどをコメントした。

つまるところどの職業も結論は同じかもしれないが、こうやって楽しく仕事をしている姿は伝えられたと思う。最後に生徒がクラス全員の前で成果発表するとき、別グループの担当講師の学者・医者・福祉・司書のプロフェッショナルぶりに触れたのは面白かった。たとえば、卒業して悩んだら図書館に相談に来てという話は、ああそういう社会的に大事な役目なのだ、と思った。一方、進行していた若い教師が巧みに生徒をリードするのもタメになった。人の話を理解しようと思ってきくといい質問ができる、と関心を促し、生徒の成果発表の声が小さいと、思っていることは大きな声で話すと皆に伝わるよ、と工夫を提案する。あ、ここにもプロがいるんだ、と感じた。ここの生徒はじつにいい時間を過ごしている。

佐野吉彦

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