建築から学ぶこと

2022/07/27

No. 829

物流倉庫とともにある社会

最近、ある大型物流倉庫が供用を始めた。長距離鉄道や高速道路網、空港や港湾に近い都心の立地で、高効率で大容積の計画が達成できている。ここには複数の大手物流プレーヤーが入居して、冷蔵冷凍を含む多様な商品保管だけでなく、それらの仕分けの作業効率化を推進する。これに商品出荷後のサービス体制の拡充が加わり、日本の物流に一層弾みがつく予感がある。

そして、この新倉庫はEC(電子商取引) 物流を支える基盤の一部となる。日本のEC2020年に急拡大しているが、各国と比べるとまだまだ消費のデジタル化度は低い。加えてここ1-2年の日本の伸びは鈍化している(日本経済新聞724日記事)。これは日本の現在の課題でもあるが、グローバル経済活性化にも影響するテーマである。しかし、コロナの歳月で学んだ市場開拓の知恵を丁寧に掘り下げれば、伸びの再加速はできるのではないか。物流倉庫の需要はまだまだある。

この倉庫建築には、環境貢献・災害対応などいろいろな付加価値が伴っている。それはスペースの大きさとともに、プロジェクトに関わる企業の価値向上に寄与することになるだろう。社会的な責任、地域への貢献を実現できているからであり、そのメニューあるなしで倉庫の差別化も進む。倉庫は多くの雇用創出を生む場所でもあるから、働く人が感じる満足感の観点からも重要である。

なお、建設のプロセスはコロナ禍の時節と重なっていたこともあり、設計・施工におけるデジタル活用は進んでいた。これは結果として工事の精度とスピードアップに貢献しているので、建設産業だけでなく各企業の国際的競争力向上を確実に支えるものである。倉庫はシンプルながら、なかなかの密度を持っているのだ。

佐野吉彦

倉庫の未来は、世界の未来。

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