建築から学ぶこと

2008/02/27

No. 121

人と都市がかかわりあう日

第2回目の東京マラソンは、きりりと冷え、すっきりと晴れた。フルマラソンが27,386人、10キロと合わせて32,426人のメガレース。私は1月にフルを走ったあと、昨年に続いての参戦となる。経過を振り返ると、押さえ気味の序盤からほぼ安定した中盤へと続き、そのまま35キロくらいまではペースを維持した。何とか自己制御がうまくゆくと、最終タイムとは関係なく満足感が得られるものである。これはマラソンの醍醐味のひとつで、後味は良い(ちなみに3時間48分でゴール)。

もちろん、醍醐味のもうひとつはコースである。東京は都市のランドマークを目標にとりながら、細かな起伏をひとつひとつ捌いてゆく楽しみがある。怠けさせず、単調にならない工夫がみられる。応援のあたたかさについては前回も感じたが、今年は私設エイド(公式でない所で自主的に菓子などを準備してくれる人たち)が増えたのは印象的。今後このレースとコースが自然なかたちで都市に溶けこんでゆく可能性を感じさせる。この同じ日、大阪府下では15年の歴史を持つ泉州国際市民マラソンが開催されている。ほぼワンウェイだが、個性の異なる都市が順番に登場してくる、こちらも興味深いコースだ。1度参加した印象では、走路が広くはないぶん、沿道の声援が近い。どこのレースでも、こうしたまちの空気とつながる走後感は、開催地への親しみをおおいに高めるものだ。身体感覚でのファンが生まれると、その地域にとって永く有益な存在になるであろう。

今回の東京は、運営面で前回のフォローアップがなされ、ほぼ滑らかなものだった。でも、すごくスマートでなくてもいいのだ。東京マラソンはオリンピック誘致のためにあるのではなく(理由のひとつでもいいけれど)、これまで地道な取り組みの延長線上に実現したものである。官製ではないはずだから、いつまでも続いていてほしい。自発的で、多様な速度感というものがどれだけ都市をいきいきとさせるか。この日はそれをいろいろな立場から試し、確認しあうかけがえのない日なのである。

佐野吉彦

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