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建築から学ぶこと

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ベーレンス建築と出会った日

4年前の晩秋、ベルリンに一泊した。翌朝はホテルを早々にチェックアウトして、朝食時に開催している小さなロータリークラブのミーティングに参加することにし、中心部から北寄りのレストランに立ち寄った。そこは海外駐在員が多いクラブで、その日はアパレル分野のカナダ人から、エコロジカルな商品のコンセプトについてのショート・レクチャーがあった(言語は英語)。そのあとはベルリン・テーゲル空港に向かう予定だったので、クラブの会長が自分の車で送ってあげよう、というので初対面ながら厚意に甘えることにした。ちょうど冬用のタイヤに交換する予約をするので、途中で自動車整備工場に寄るけどいいかい?と言われたので、遅れなければよいがと思いつつ同意した。

ほどなくその工場の駐車場に着いてちょっと待っていてと言われたので、あたりをのんびり眺めてみたら、何と眼の前にペーター・ベーレンス設計による近代建築の傑作・AEGタービン工場があった。例えるなら、羽田空港に近い大田区のようなコンテクストのなかにこの工場があったと理解できた。きっと1910年の竣工時も、そうした風景にうまく連続させながら、濃密さと造型的な切れ味を持つデザインを試みたのではないか。モダニズムに分類されていても、同じようにガラスや鉄の上手な使い方をしても、郊外住宅地で純粋に造形を追求したタイプと同じではないのだ。あるいは、そういう解き方ならベーレンス門下のタウトやグロピウスが、よりうまくこなしたというべきか。でもむしろ、現代の我々はベーレンス建築の切り込み方から豊かな意味を感じ取ることができる。

やがて用事を終えて戻ってきた会長は建築関係ではないので、私とは興奮をさほど共有できなかったが、彼と出会ったおかげでここに来ることができたのは感謝である。その日常にベーレンス世界があることをうらやましく思いながら、車はテーゲル空港にスムーズに着いた。ちなみにこの空港はあれから移転で廃港になっている。

AEGタービン工場は、当時の最先端だった。(photo:rucativava, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons)

対話力は設計力

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