2025/07/09
No. 974
19世紀フランスの思想家アレクシス・トクヴィル(1805-59)は、民主主義社会を支える条件を追究すべく、まだ若い国・アメリカ合衆国の視察に出向く。イリノイ州はまだ西の端だった時期、各地で「自由な結社」が地域を支え、その自発性がこの国を支えていることに気づいた。当時のフランスは革命で王朝が斃された後のリーダーシップをめぐって混迷していたはずである。そこでトクヴィルが見たのは、いかに優れた民主的基盤と政治によって国を構築するかというテーマに収まりきらない、アメリカの特質だった。
やがて「自由な結社」は、20世紀に入ってバリエーションを生む。ロータリークラブやライオンズクラブやキワニス、ボーイスカウトといった、今日も活動が続く自発的なネットワーク組織が、当時の社会問題を背景にシカゴをはじめ中西部に誕生したのである。これらの活動はやがて世界に広がり、「民主主義社会をただしく育てる教室」になってゆく。こうした、いまで言うサードプレイスでは、日常の上下関係や利害関係、あるいは世代の差と関係なく、異なる専門分野が交わって新たな知見を得て、そこに社会課題に対する気づきを生む。そのプロセスで、社会の改善だけでなく、メンバーを成長に導いている。良いサードプレイスは、誰に対しても有益なのである。
このような場の活力こそ、社会を支える健全な姿と言えるだろう。去る7月4日はアメリカ合衆国の独立記念日であり、各地でその建国の精神を想起したと思うが、これからもきっとその風土から育った「自由な結社、自発性に基づくコミュニティ」が、アメリカを含むこれからの世界を正常(!)に戻し、よりよく成熟させてくれることを期待する。
今年、ローマ教皇に新たにレオ14世が着任しているが、この教皇は自由な結社の揺籃の地・シカゴの生まれである。それもあって、労働問題にも理解が深い。教皇もまた、民主主義社会を育む空気の中に生まれたことには、希望を感じる。
未来への基盤:丹下健三によるスコピエの都市計画@大阪・関西万博の「北マケドニア」展示(コモンズA)