建築から学ぶこと

2024/04/24

No. 915

あと1年、万博の扉が開く

2025年の「大阪・関西万博」の開幕まで1年を切った。工事は大きく進んできたが、全体コストの上昇も見込まれ、開催の意義もずっと問われ続けている。実際、ネガティブな発言が起こりがちな状況を見ると、東日本大震災があった2011年の秋、東京で開催された第24回世界建築会議を思い起こす。私はその国際大会運営の当事者だったが、その時もいま日本の建築界にとってどういうメリットがあるのか、との意見をたくさん聞いた。資金の問題を乗り越えて開幕した会場では、各国が豊かな情報を持ち込み、実りある交流も生まれた。苦心して整えた「大会インフラ」とはそういう効果をもたらすのか、と実感したものである。

たぶん、このような国際的な場の主役は開催国ではないのだろう。京都大学大学院の佐野真由子教授(文化政策学)が<万博の主役は世界各国です>と語っているところには共感できる。同氏は続けて、<開催国に求められるのは、現在の世界をどう見て、どうあってほしいかを演出する世界観。今回の日本は海外の万博に出展するような「参加国マインド」から抜け切れず、自分たちをPRする場と考えすぎている気がします。世界を迎える立場を自覚して各国を最優先でサポートし、主催する意義を国民に真正面から伝えることが、成功のために重要だと思います>(*)と述べている。

確かに、高校生だった私は1970年の大阪万博で、ドイツ館[音楽]、チェコスロバキア館[工芸]、EC(EUの前身)館[平和維持政策]などが発する明瞭なメッセージに心を撃ち抜かれた。2025年も、各国がどのようなメッセージを発信するかを見てみたい。若い世代にとって人生のきっかけとなる衝撃的な出会いにつながるのなら、日本が汗をかいて良い「大会インフラ」を準備し、万博を成功に導く意義はあると思う。

 

(*)朝日新聞2024.4.13

佐野吉彦

Expo Site (敷地外から)

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