建築から学ぶこと

Learning from Architecture

山形の品格を支えるもの

  • No.573
  • 2017年May17日

薬師祭植木市」は、山形の春に長く続いてきた行事である。日本三大植木市のひとつで、残り二つの大阪市と熊本市が公園を中心に開催されるのと比べると、山形市のそれは、街路に沿って緑の帯が約3キロ続き、街に溶けこんでいる。植木や切花、これに夜店を加えた大スケールの縁日空間を、多くの世代が本当に楽しそうに過ごしている。現在は5月8日から10日に開催日が固定されており、さわやかな気候のなか、心地よい春を心からかみしめているように感じられる。冬の気候が厳しいこのまちの人々にとって、一番晴れやかになれる日なのであろう。 
植木祭の街路は「薬師堂」を目指して「文翔館」右手の交差点から入ってゆく。山形市は質の良い近代建築が残るまちであるが、この「山形県郷土館・文翔館」は旧・県庁舎(1916)として使われていた。かつてその近傍にあり、のちに移転保存された旧・病院本館「山形市郷土館・済生館」(1878)を含め、いい面構えの建築が点在している。植木市とともに、こうした<生き生きとした要素>が、山形市街に気品を添える重要な役者になっている。
もうひとつ、「山形交響楽団」もこのまちに大きな貢献をしている。45年前に指揮者・村川千秋さんが創設したこのプロ楽団は、地域の音楽の基盤を支え、多くの若い世代を育ててきた。息の長いスクールコンサートなど、地域に根ざす活動は創設以来受け継がれた意思であるが、これは村川さんの大学同級の岩城宏之さんが金沢で始めた取り組みと呼応するものである。一方で、「山響」は、現在の音楽監督・飯森範親さんのもとで演奏レベルも大きく高まった。引き締まったアンサンブルと、古楽器を使った響きは個性的であり、他にない独自性にこだわっているところは素晴らしい。ちなみに、この「山響」の事務局は「文翔館」の向かいにある。

  • 植木市のにぎわい。

Copyright (c) 1998-2017 Yasui Architects & Engineers, Inc.

PAGE TOP