建築から学ぶこと

2025/08/06

No. 978

平和と人権を考える夏

今回の万博の主催行事「大阪・関西万博テーマウィーク」では、毎月異なるテーマが設定されている。80年前の終戦を想起する8月は、「平和と人権」という、重要でリアルなテーマ。20世紀の前半の人権の蹂躙は甚だしく、その反省から国際連盟に代わって1945年に国際連合が発足し、日本では新たな憲法が成立する。もちろんそれらは達成地点ではなく、「平和と人権」の達成の長い旅は、20世紀半ばのこの地点から歩みを始める。しかしながら大国のパワーポリテクスも、戦後独立した国に生まれた軍政も、人々を沈黙させる影響力を持ち続けた。平和と人権をめぐっては、ある面では改善が図られたとしても、結局、問題は十分な解決を見てはいない。
さて、「平和と人権」テーマウィークの中で、8月1日に「青少年の提言―平和構築と人権擁護」と名付けた企画が開催された(*)。前半は法学者である甲南大学・中井伊都子学長が<人権尊重と、前提としての平和>について論じ、さらに途上国各地での社会制度構築や自立への支援に向き合ってきた若いプロフェッショナル4名が経験を語り、後半は高校生7グループが探求したグローバルな(あるいは普遍性を有する)社会課題の発表が続いていた。発表後の、前半の登壇者が加わった多世代による掘り下げた議論は中身があった。ここでの要諦は、平和構築も人権尊重も、粘り強い対話に始まって、そして取り組みを着実に継続してゆかねばならない、というものである。
この日に扱われていたように、各地で起こっている平和と人権の問題は、教育制度、言論におけるリテラシー、環境問題、さらに住環境整備の課題とも密接に関連してくる。それらの解決は、当然ながら個人の善意や能力を越えるものだから、ゴールに向かうには、対話と連携は必須なのである。それらこそ、民主主義の基本というわけである。いい議論を聴いた夏だった。

佐野吉彦

光と影、夏の万博

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