2025/09/10
No. 982
第38回の日経ニューオフィス賞に、安井建築設計事務所オフィス(東京事務所美土代クリエイティブ特区)が選ばれた。2024年1月に移転したこの神田のオフィスは、広がりのある2フロア半であり、30年近くいた平河町の縦積みタイプからすると、大きな変貌である。それ以前は市ヶ谷駅前のオフィスビルにいて、延べ面積は現在の神田の半分程度ながら、これも2フロア半だった。意外なつながりだが、それが我々にとって使いやすいスタイルなのであろう。
建築計画としては、フリーアドレスとペーパーレス、地域に開くスペース、環境性能追求は評価をかちえている。このうち「歩き回る距離を増やすオフィススケープ」は現今、経営効果が上がる手法として、今回の同時受賞プロジェクトに多く見られた。審査の中では、我々の「自主自立」のオフィス運営、それと並行して推進している経営スタイルをさらに評価してもらえている。
今回の新オフィス計画は、社内コンペで選ばれたチームが策定した。私自身は移転の判断と、そのコンペに社内外の審査員を指名することに役目を限った。その経緯から、計画立案とオフィス運営は、チームが責任を持って臨むかたちが生まれたのである。選定案は接地するフロアを使って地域とつながる方策に重きを置いていたので、なおさら運営に関わるのは自然な流れである。結果としては、こうした新たなオフィスプランニングが経営の背中を押している手ごたえもある。
なお、地域とつながるアクションはすでに平河町時代から始めていた。また、近年の経営風土改革の取り組みも、いい形で進んできた。これは、我々が本来あろうとしてきた方向性に、オフィスにおける時代や経営の変化が重ね合わさってきた、ということになるだろうか。
地域に開く場所。