2025/10/29
No. 989
長い暑さがおさまった日、福井に出かけた。約束まで時間があったので、当地の交通体系を経験することにし、新幹線福井駅を降りて、まず「えちぜん鉄道」に乗った。市街地を抜けると郊外住宅ゾーンや田園地帯が続くのどかな三国芦原線は、東尋坊に近い三国港駅まで伸びている。この路線には中心部を抜ける併用軌道線(路面電車)の「福井鉄道」が途中まで乗入れていて、沿線住民にはチョイスが複数という利便性がある。じつはこちらの鉄道は乗りやすい低床型なので、乗入れ区間のプラットフォームは両鉄道に対応できるよう、高さを変えた設置をしている。
福井は空襲や1948年の福井地震、度重なる豪雪を経験したこともあり、幹線道路も緑地も広い。ハードな都市システムとしては各ポイントで配慮が行き届いている。今年、東洋経済「都市データパック」が6月に選んだ「住みよさランキング2025」では福井は全国の市区で総合1位になったのはそのこともあっただろうか。
さて、その日の用事とは、福井RC(ロータリークラブ)の75周年記念式典への出席だった。私はこの7月からの1年間、大阪RCの会長を務めているのだが、このクラブが1950年の設立に手を貸したのが福井RCとの縁がある。当時は全国の拠点都市での設立を呼び掛ける意図もあり、同年設立の大分と堺(大阪)にも協力した。福井の場合、時期からすると、草創期の社会奉仕活動の課題は都市の再建と隣りあっていただろう。その後も現在に至るまで若い世代育成への細やかな支援は手厚い伝統がある。そのようにしてメンバーは継続性あるソフトな社会システムを育ててきた。クラブとは自発的に成立するコミュニティだから、自治体の境界と一致する必要はない。ロータリークラブだけではないが、この街から自然に伝わってくるクオリティ感とは、いろいろなコミュニティが有する自発性が生み出したものではと考える。
2つの鉄道、2つのホーム(新田塚駅)