2025/12/24
No. 997
ことし様々な設計業務に取り組んできた中で、メディアに扱われることが多かったプロジェクトが2つある。1つ目は<美土代クリエイティブ特区>(安井建築設計事務所東京事務所)で、2024年1月に神田美土代町に移転以降、積極的にご案内をした流れを受けている。共感をいただいた方はさらに輪を広げてくれた。竣工後60年のビルのリニューアル、自由な働き方の背中を押すオフィスデザインは着目点だったが、業務ゾーンや地域に開いたゾーンのスペース運営を自律的に進めている点は、日経ニューオフィス賞やJFMA賞での評価につながっているのではないか。オフィスづくりのスタートから、総務マターやトップダウンのかたちでないのは、もしかして新鮮なのかもしれない。
実は、このオフィスのありようは安井建築設計事務所100年の追究の道筋にあるようで、過去とは一線を画している。美土代には我々が携わってきたオフィス設計にあったような「明瞭な目標と解」は存在していないからだ。働く人自身、地域や社会からのフィードバックを取り込み続けることで、目標は流動性を帯びる。<オフィス設計のベストアンサーも、常に変わり続ける>というわけである。
メディアに注目された2つ目は、<大阪メトロ・夢洲駅>である。大阪・関西万博では東口と西口があったが、結果的に2/3はこの夢洲駅からアクセスしたから、折紙天井のデザインは多くの人のハレの日の記憶に重ねあわされた。幸せなプロジェクトである。これから時間をおいて、ここがIRのアクセス駅になるとき、感じ方はまた違ってくるのであろう。技術的には、我々の駅舎設計の経験が生きたプロジェクトだが、同じように<駅の設計のベストアンサーも、常に変わり続ける>のである。竣工後の変化を予め読み切るのは難しいが、よくできた建築は、よい方向への変化を宿しているようにも思われる。2026年もワクワクする仕事に出会いたいと思う。
すっかりおなじみ、大阪メトロ・夢洲駅