建築なんでも相談

建築から学ぶこと

2026/10/14

No. 1035

心意気のある人々―今年のノーベル賞から

今年のノーベル賞受賞者が発表された、化学賞の東京理科大学名誉教授(速やかに栄誉教授に)の硤合憲三(そあいけんそう)氏と、フランスのアンリ・カガン教授の功績は生命の起源に関わる研究である。生物には、いわゆる左手型と、鏡写しの右手型の2つのどちらかに生まれついたら、あとはそれぞれ自己増殖してゆくメカニズムがあるらしい。この研究は東京理科大学の、さほど広がりのない神楽坂キャンバスのフラスコのなかから生まれた大きな成果である。
同じく神楽坂キャンバスで学んだ、千葉大学の石原安野(あや)教授とそのグループは、物理学賞の米国のフランシス・ハルツェン教授のニュートリノの挙動を解明する研究を支えた。これは宇宙の起源の解明につながるとも言われる。生理学・医学賞は米国のダイセロス氏・ドイツのヘーゲマン氏とナーゲル氏の3教授の光遺伝学研究に与えられる。光によって神経の活動を制御するもので、神経細胞の再生に応用できる可能性がある。
以上の研究にある、時間をつなぐ奥行きある視点は、文学賞のアン・カーソン氏(カナダ)による、古典文学と現在を交差させる視野に通底しているかもしれない。平和賞の元国連人権弁務官のナバセネム・ピレイ氏(南アフリカ)が取り組んできた平和と国際法推進への努力には、先人が積み上げた資産と精神は今後に引き継ごうと腹を決めた意思を感じる。
経済学賞は、ホール氏とウッドワード氏のふたりの米国の教授による「マクロ経済安定化のためのミクロ経済学的基礎」に決まった。これをベースにして、我々が日頃自然に感じている経済感覚が、すでに世界中の各中央銀行や政府の方策に反映されているというのなら、財政の判断を信頼してよいかもしれない。政治家が余計なことを口走っても大丈夫そうだ。

佐野吉彦

見通しの良さ、流れの良さは重要だ(神戸・住吉川)

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