建築なんでも相談

建築から学ぶこと

2026/01/07

No. 998

都市を計画するが偉いか、使いこなすが偉いか

都市計画を取り仕切るのは誰だろうか。パリでは、この都市の輝かしいイメージを可視化したジョルジュ=ウジェーヌ・オスマン(1809-91)が特筆される。彼はセーヌ県知事在任時(1853-70)、皇帝ナポレオン3世とともに市街の改造計画を推進し、ターミナル駅につながる広いアベニューをいくつか貫通させ、文化施設やモニュメントを際立たせた。帝政期に押し切った感がある仕事だが、その切口は今も有効である。
それに先立つ、ローマ教皇・シクストゥス5世(1520-90)は、在位時(1585-90)に、「対抗宗教改革」(対プロテスタント)の視点から、ローマの再構築に邁進した。こちらのアベニューは巡礼の目的地である大聖堂拠点群を結び、カトリック世界を束ねる宗教都市ローマのイメージを強化した。
このような公共空間のありようは、いかにも権力者が用意した計画と言えるだろう。その後、市民が使いこなしてこそ都市は価値がある、との視点が時間をかけて育ってゆく。「健康」と「都市美」をコンセプトとした、ニューヨークのセントラルパークは先行例である。フレデリック・オルムステッド(1822-1903)による見事なランドスケープデザインは、市民の様々な活動の基盤となった点で評価されるのではないか。
さらに進んで、市民はパーク内の活動で甘んじるのではなく、広いアベニューを車の占用状態から取り戻すことに意義を見出した。たとえば週末に、普段とは違う人の流れを生み出し、市民が上手に道を使いこなす経験が増えると、都市に奥行きが生まれるだろう。新たな景観発見につながる大阪マラソンや、宇都宮のジャパンカップでのクリテリウム(自転車競技)、歴史あるコミュニティをつなぐ博多山笠、建国に関わる史跡を訪ね歩くボストンのフリーダムトレイルなど、経緯は様々であるが好例と言える。都市のインフラを活性化する主体が市民であるのは素晴らしい。

佐野吉彦

年初に華やぐ、都市の聖域:今宮戎

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