建築なんでも相談

建築から学ぶこと

2026/08/05

No. 1027

災害から学ぶことー熊本地震

7月28日の熊本の地震は、この地に再び甚大な被害をもたらした。とりわけ、酷暑の日々にあって、居住の困難が多数生じており、避難者の健康を心配する。今回は2016年の当地の地震と比べて震源は南に寄っているが、多くの製造工場も被災し、同じようにサプライチェーンに影響が及んでいる。この10年、熊本県下では広域インフラ整備と豊富な水量を背景として多くの工場進出があり、生産と流通の枢要の地となっていたのである。
一方で、熊本は10年前の地震からの復興経験の過程で、様々な知恵を学んできたのではないか。当時は熊本には地震の経験が少なく、また本震を上回る余震が起こりうる認識も薄かった(全国的にも、余震への警戒をその時明確に認識した)。今回は、避難行動でもその経験知をふまえているように感じるし、隣県の協力体制も立ち上がりも早く、それらが被害軽減に寄与していると感じる。並行してこの10年で建築や土木の基準改訂や技術改善は着実に進んでいる。熊本はさらにリスクマネジメントが求められるが、このように対処は確実に前進してきた。なお、商業施設のガス爆発の誘因(施設の避難誘導は円滑だったが)や、庁舎の免震構造の有効性(免振層は、修復すれば機能回復しそうに思えるが)については、検証の結論によっては全国的に影響(基準など)があるだろう。
以上をふまえて考えるなら、熊本に留まらず災害国日本が世界からの産業進出を促進し、世界からの評価を正当に受けようとするなら、震災はじめ自然災害の確実なフォローアップは必要である。そして、今回の災害報道では顕著ではないが、交通の便が良くない居住地の被害は、将来の人口維持に支障が生じかねない。その地に住み続けることへの尊厳を忘れることなく、決して効率的な復興に留まらないよう、注意を払っておく必要はある。それも世界へのポジティブな発信となるだろう。

佐野吉彦

熊本・島原間航路。平穏を願う。

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