2026/10/21
No. 1036
サントリーホールが「DOCOMOMO JAPAN」から、日本における優良なモダン・ムーブメント建築として、2026年発表選定建築物(第311号)となった。竣工後35年経過すると選定対象となるので、実年齢としてはまだ若い。モダン・ムーブメントとは、建築に限らず様々な領域にまたがる共通の理論と実践で、音楽ではシェーンベルクやメシアン、バルトーク等の作品が、抽象性から生まれる美しさをベースに、世界につながる普遍性と幅広い影響力を獲得している。いわば、この場で奏でられる音楽と建築の間には精神が通い合っているのである。
かくして、DOCOMOMO選定により、サントリーホールは建築に宿る意義を受け継ぎ、保全と活用を推進する使命を担うことになった。もちろんこれまでも、開館40年となる過程で、運営サイドと設計施工に携わる各社が連携してホールの性能を保ち、改善を重ねてきており、それも評価されている。サントリーホール、そして安井建築設計事務所は、この好循環を継続し、ホールの価値とDOCOMOMOの社会的意義の双方をさらに押し上げる責務がある。
もうひとつ最近、私たちの仕事で好ましい評価を受けているのが、重要文化財である奈良監獄のリニューアルである(少年刑務所をホテルとミュージアムに用途変更)。ここでのねらいは、すでに近代の法制度の歩みや建築史を物語る資産としての価値を、次世代に引き継ぐことにある。とは言え、実際に建築を生き永らえさせるには知恵が必要であり、京都における京都市京セラ美術館(設計:青木淳)や郭巨山会所(設計:魚谷繁礼)などの改修アイデアは、粘り強い追究と議論に支えられている。建築に市民が関心を寄せ続けるために、そして建築がコミュニティの核として有効に使われるために、着実に好ましい事例を積み上げてゆくことは重要である。
サントリーホールへの伝達式:この価値は連携して作られた